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第7回 From London vol.22019/07/03

「チャコの期間限定ロンドン生活」

海外生活での毎度の食事となると味噌汁の具材にさえ困るような日々である。食に対して並々ならぬ拘りが無くとも、馴染みの食材が手に入らない食生活はちょっと物足りない。
せめてこの国の美味しい料理で心満たされたい、と思ってもここはイギリス。
ご飯は不味い、という世界的なお墨付きを頂いてるイギリス。
「イギリスで美味しいものを食べたければ朝食を三度食え 」という名言すらあるイギリスだ。
(ここで言う朝食とはフル ブレックファーストのことで地方によって呼び名が違い、イングランドでいうイングリッシュ ブレックファーストのことである。トマト、ベイクドビーンズ、マッシュルーム、ブラックプディング、ベーコン、ソーセージ、卵、パンなどなど、品数多くて盛りだくさん、栄養価満点のワンプレート朝御飯である。)
そもそもそんな盛りだくさんのプレートを毎日食べてるイギリス人もいないが、本当に毎日毎回何を作ろうか、何を食べようか悩むのである。

茹でたり焼いたり揚げたりするだけの調理法をアングレーズ(イギリス風)と呼ぶが、実際イギリス料理はその様なシンプルな調理は多い。
また味付けも日本食のような素材の旨味を生かした繊細な味付けではなく、味付けは個々にお任せと言わんばかりにテーブル上に置かれている調味料で食べる際に自分で好きなように味付けするというのがイギリス風である。だから付け合わせの野菜は茹でただけだったりするし、フィッシュアンドチップスもビネガーやタルタルソースで食べるようにと味付けがなかったりする。

時に笑い話にされるイギリス料理はピューリタン革命における質素な生活の始まりや、フランス革命後のフランス文化の排除など様々な歴史的な背景が積み重なったため、そして天候が悪いため色々な野菜を生産するのが困難だという地理的要因も、フランスやイタリア、スペインなどの近隣国のような美食国とはならなかった理由だと言われている。

しかし、かつて世界の三分の一ほどが植民地だった大英帝国であるので世界中から色々な食材を運び入れていた。
植民地だったインドからは茶葉やスパイスも輸入されていた。日本の国民食であるカレーを作る際に便利なカレーパウダーは実はイギリス発祥である。
てっきりインドの料理だと思っていたチキンティッカマサラもイギリス発祥の料理である。
イギリスに来たらカレー屋に行けと言われるくらい美味しいカレー屋が沢山ある。

そしてイギリスの食生活を語るのに忘れてはならないのが紅茶。紅茶の国イギリスとして知られるが、紅茶を飲み物とした始まりは、ポルトガルの王女のキャサリン妃がポルトガルで行なっていたティータイムをイギリスに嫁入りしてからでも人を招いて楽しんだことから広まったと言われている。それまでは紅茶は薬とされていたので飲んで楽しむ習慣はなかった。
このキャサリン妃がイギリスで居を構えていたロンドンのサマセットハウスは紅茶の聖地と言われ、クリスマスになるとフォートナム&メイソンが可愛いツリーを飾っている。
そして1706年に世界で初めての紅茶専門店を開いたトワイニングの店は今も変わらず同じ場所で本店として営業しており、びっくりするくらい細長い店の奥には紅茶の歴史をうかがえる茶道具の品々が陳列されている。
イギリス人の紅茶愛はイギリス人が今もなお毎日毎日紅茶を沢山飲むことからも本当によくわかる。

Somerset Houseのフォートナム&メイソンのクリスマスツリー

現在は物流も保存輸送が可能になり、欧州連合国からみずみずしい野菜や果物などが安く沢山イギリスに入るようになったし、有名シェフや他国の有名店がこぞってロンドンに店を構えている。
そしてイギリスは多国籍民族の国であるため、世界各国の美味しい食事もイギリスで楽しめる。
住宅街の中にあるガストロパブで出されるイギリス料理も大変美味しいし、チェダーやスティルトンなどのイギリス産イギリスチーズも本当に美味しいのである。

朝は美味しいイングリッシュブレックファーストを、そして昼も夜も自分で味付けする事なく美味しいものを食べれるし、パブで食事とビールを楽しんだり、豪華な雰囲気の中で三段トレイのアフタヌーンティーを楽しんだりと、今やイギリス旅行では食べることも楽しみの一つになるのかもしれない。

至福のひととき。

それでもまだご飯は不味いと言われ続けるイギリス料理。
ウィットに富みひねりのあるジョークが好きな国民性だから一緒に笑ってくれるのか、紳士淑女で他人を思いやる国民性だからあえて否定せず一緒に頷いてくれるのか。
今やもうイギリス料理には困ることはないが、我が家の食卓はまだ困っているのである。

フォートナム&メイソンにて。紅茶缶が並んでるだけでも素敵である。

ティーポット売り場にて。まるで美術館にいるよう。