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第9回 弓庭 暢香さん2018/03/02

エアラインの後の第一歩

弓庭さんは、国内大手航空会社で19年のキャリアを積みました。
結婚を機に、規則正しい生活へ戻りたい気持ちが芽生えたと同時に、
CAとして一通りやり終えた、という達成感で満たされたこともあり、退職を決意しました。
この先、何か仕事はするだろう、と退職後にまず行動したことは英語学校への入会。
「何をするにしても、英語は仕事のツールになると思っていました」。
週1日4時間のクラスでしたが、かなりスパルタな教室で、中身の濃いプログラム。
2年ほど通い 、自分の弱いところが克服され、現在の仕事ではコミュニケーションツールとして役立っている、とのこと。

今回のインタビューを依頼した時に、「うちにいらっしゃいませんか?」とのお誘いを受け、
お言葉に甘えてお邪魔したお住まいの素敵なこと!

「私はコーヒーが大好きなんです」

と、愛用のコーヒーグッズはもちろん、こだわりぬいて取り寄せたコーヒー豆など、
それらがあるべき場所に、きちんと落ち着いていて、その空間に癒されました。
思えば、小さい頃にご両親が飲んでいたコーヒーの最後の一口を、弓庭さん用に砂糖を入れて飲ませてくれることが、何よりも嬉しかったそうです。
一人暮らしを始めるときも、「どこにコーヒーメーカーを置こうかな」と何よりも先に考えたほど暮らしの中心だったそう。 
そして、CAになってからは、ステイ先で様々なカフェをめぐったり、
各国のコーヒーグッズを集めることも、楽しみの一つとなっていました。

「そのコレクションやコーヒーのある生活が、今の仕事に結びつくとは思ってもいないことでした。」

好きなものを、仕事に?

「好きなものをインスタグラムに載せてみよう」
というアートディレクターの仕事をしているご主人の一言で、弓庭さんの次のキャリアが動き始めました。
資格武装をしてから、と思っていた弓庭さんに「年齢的にも、もうインプットではなくアウトプットしていくべき」と背中を押してくれました。
好きなものだったら続けられる。好きなもの、それはコーヒー。
でも、コーヒーの専門家を目指したい訳ではない。
本当に自分の好きなものとは何か、を考えた末に行き着いたのは「コーヒーのある暮らし」そのものだったそうです
「コーヒーをビジネスにするなんて、カフェを開くこと、しか私は思いつきませんでした。もっと身近にできるんだ、と夫が 私にできるビジネスとして、好きなものを吸い上げてくれた感じです。」というほど、ご主人の存在が大きいことは確か。
弓庭さんの中で閉じていた楽しいものが外に出ていく、不思議な感覚だったそうです。

ご主人様曰く、弓庭さんは「好きなものに関して、チョイスするものが、白黒はっきりしている」、つまり、ブレがない、とのこと。
「これは仕事になるよ。 結果なんてわからない、とりあえずやろう」と、ご主人とともに始めることに。
写真のスタイリングを弓庭さんが、そして写真撮影をご主人が担当。
2人のお気に入りの「コーヒーのある空間」を共同作業で発信する、cafenoma(カフェノマ)という名前でスタートしました。
しかし、弓庭さん自身は「何が生まれるのだろう」と、仕事になると思えないままのスタートだったそうです。

好きだからこそ、こだわりを

『コーヒーのある生活』を軸に、コーヒーを淹れること、だけではなく、
その空間を大切にした写真や、コーヒーにあうオリジナルのお菓子も紹介するようにしました。
ご存知の通り、インスタは写真中心。もともと文章は苦手だし、写真の方が空間や暮らしを伝えやすい、と週2,3回の頻度で更新していきました。
写真は世界各国共通で有効ですが、さらに短い日本語と英語も添えて、よりcafenomaの世界観を伝えるように工夫していきました。
まるで本物のカフェの広告写真のようなそのセンスの良さは、コーヒーを心から楽しむ気持ちの表れ、そのもの。
同時に、撮影場所である自宅のインテリアの趣味の良さも際立って、見る見るうちにフォロワーが増えていきました。
そのことにも戸惑いを感じましたが、「ファンを作ることが、説得力になる」と、再びご主人の一声。
地道にコツコツと続けることで、企業から広告依頼がくるようになっていきました。
しかし、cafenomaの世界観と違う、共感ができないことは、すべてお断りした、というブレない姿勢を、ここでも貫き通しました。

自分が本当にやりたいこと

3年ほどたったころ、ある出版社から「本を出しませんか」と声がかかりました。
突然のことで驚いたそうですが、同時に「今までやってきたことがやっと一つの形になる」「これまでの積み重ねがひとつの世界観として公に認められた」と、とても嬉しかったそうです。
この本(うちカフェ -自宅で楽しむ本格コーヒーとカフェインテリア-)をきっかけに、
雑誌やラジオ、テレビの取材を受けるなど、露出が増えていき、cafenomaが一歩大きく前進した、そんな時期でもありました。
大変好評で、台湾、シンガポール、マカオ、香港など海外でも翻訳出版され、
台湾ではセミナーの企画を受け、コーヒーにまつわる話をはじめ、豆腐を使ったお菓子の紹介、写真の撮り方のレクチャー、といった内容で開催。
満員となり大盛況だったそうです。

そして、仕事の幅がさらに広がるきっかけとなったのは、セキスイハイムのモデルルームの一部をプロデュースしたことでした。
「コーヒーのある生活」は、その部屋の空間を提案するまでに成長しました。
インスタの撮影場所でもある、ご自宅の様子からもわかるように、「もともと雑貨だけではなく、インテリアにも興味がありました」と。
こだわりの一軒家を俳優が訪ねる、有名な長寿テレビ番組も、第一回からほとんど見ているそうです。
そして、現在販売中の横浜のマンションは、モデルルーム やコンセプトをcafenomaがすべて監修。
共有スペースのラウンジ内の空間コーディネート も任され、「誰もが自然と行きたくなるような、居心地のいいラウンジ」として、カフェのような空間に仕上げました。
すべてが今につながっている

“大好きなもの”、そして、それを楽しむ“空間作り”が、仕事に結びつきました。
前職を話すと、取引先からは接遇マナーについてもレクチャーしてほしい、など、また違う広がりがあることも。
順風満帆には見えますが、「PC力がないので、作業にとても時間がかかりますよ。あとはプレゼン、交渉も苦手。CA時代はお客様と話すことは大好きで楽しかったのですが、それとはまったく違いますね。対外的なやり取り に、最初は戸惑いました。」
そして、さらに「CAの時は“乗務規定”、つまり、マニュアルを判断基準にして対応していましたよね。基本があるから、そこから考えて応用を効かせることができました。今は自分たちで、すべてを作り上げていかなければいけないので、提案する、考え出す、ことに慣れていないことも苦労します。でも、私の場合は、好きなことが軸になっているので、最近は、考えを“とっちらかした”後に、最後にギュッとしめられるようになりました(笑)。」

この先は、まず、オリジナルの雑貨を手掛けたいとのこと。
さらに、cafenomaの世界観を共感してくれる人がもっと広がって、違う分野とのコラボもしてみたい、と。
控えめで自分から前に出ることのない弓庭さんの穏やかな野望は、少しずつでも着実に広がっています。
それは、長年培ってきた審美眼が、ブレなく確たるものとして、心地よく彼女を導いているのでしょう。

愛犬コロちゃんも、たまーに出演

今回の写真はcafenomaさんのインスタグラムより提供していただきました。




弓庭さんにQuestion♪
転職して、CAだったから良かったこと,,,苦労したこと,,,
よかったこと
=========
人と接する時に洞察力や対応力が鍛えられたこと。
世界が身近に感じられる環境に長くいたので
海外で仕事をするときも物怖じせずに臨めること。

苦労したこと
=========
やはりPCスキルがないこと。いわゆる一般的な「当たり前のこと」をするにしても必要以上に時間がかかってしまうことが多々あります。
またプレゼンや対外的な交渉などは未経験でしたのでなかなか慣れず苦労するところです。
エアラインを辞めて転職を考えている方へのアドバイス
転職を考えた時に陥りがちなのが「あの資格が必要だからまだダメ」とか「もっと英語のスキルアップをしてから」とかついつい身構えて二の足を踏んでしまいがちです。かくいう私もそんなタイプでした。

たとえ最初は自分の思い描いていた通りの仕事ではなくても、新たに踏み出すことでそこでの出会いや経験によって自分が仕事に求めているものが見えてくると思います。


☆弓庭さんへのご質問などございましたら、こちらへご記入ください。