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第27回 From Germany vol.32020/07/05

Guten Tag!ドイツよりアーレンス(有田)栄子です。
今回はドイツにおける犬の環境についてご紹介したいと思います。

我が家では日本出身の柴犬(オス)を飼っています。
現在柴犬や秋田犬等の日本犬は世界的にも人気ですが、こちらではまだ頭数が少ないので珍しい犬種と言えます。散歩に出ると『小さいハスキー犬?』や『キツネみたい!』とかなりの確率で声をかけられます。

犬の海外への引っ越しには予防注射や検疫書類の用意、輸出許可取得など様々な手続きを要し、入国先によって細かく規定があります。入念に準備しなければ入国先の検疫所で係留されたり、飛行機さえ乗れないこともあるのでかなり注意が必要です。関空検疫所の助けを得ながら3ヶ月かけて出発準備が整った私達、最後の砦は約12時間のロングフライトです。



KIXでチェックイン。直ぐに担当のグランドスタッフさんが迎えに来て下さり、とても丁重にカーゴへ搭載して下さいました。


この長旅は人間でも大変なのに、生後僅か7ヶ月の仔犬には相当な負担です。私は獣医と事前に相談し、犬に睡眠薬(のようなもの)を与えて、カーゴ内でウトウトさせている間にドイツに到着する作戦を取りました。作戦は見事成功しましたが、機内の飼い主は一睡も出来ませんでした。(笑)



引っ越し後は速やかに市役所と動物病院で動物登録をします。動物病院では「ペットパスポート」が発行され、このパスポートには予防接種等の履歴が記録されます。これがあればEU内は自由に移動できる中々便利なもの。



こちらがペットパス
ポート。人間のパスポートとほぼ同じ大きさで、結構本格的です。


また、ドイツでは犬に税金が発生します。金額は飼育頭数と地域によって異なり、我が家では年間60~(約7500円)を納税しています。猫などの他のペットは非課税なのに、何故犬だけ!? と最初は驚いたのですが、ドイツの犬は排泄時は日本のワンちゃんのようにペットシートは使わず、散歩の際に済ませます。この税金は道路や公園の清掃費、ごみの回収費等に当てられるという仕組みです。

パスポートを持ち納税をしているドイツの犬達。さながら人間のようです。


私の住む町では”ご用袋”が無料で貰える他、公園にもご用袋のスタンドが設置されています。使用済み袋は公園のごみ箱にポイっと廃棄OK!


私が最も驚いた事と言えば、殆どのホテルや公共交通機関、レストランでも犬同伴の利用が可能なこと! 宿泊・乗車には追加料金が必要ですが、何の弊害もなく旅行や外食に連れて行けるのは本当に驚きでした。当然ながらその為にはきちんとした躾が大前提です。飼い主のコマンドに従順である事を始め、静かに伏せをして待っていられる、他の人や犬に吠えない、噛まない、公共の場で排泄をしない等です。我が家の犬はまだ訓練途中ではありますが、時折外食や外泊にも同伴しています。

ハンブルグのとあるホテルにて。犬用の器やベッドまで完備。一般のホテルでもこの充実振りとは驚きです。


床暖房が余程気持ち良かったのか、バスルームの床の上で熟睡・・・笑


ドイツの犬には立派な「犬権」が確立されており、人間社会によく馴染んでいる気がします。人間の良きパートナーとして共に気持ちよく過ごせるように、人間社会のマナーを厳しく、そして十分に理解させ、社会全体も犬達を寛容に受け入れているように思います。その反面、躾の不十分な犬がいれば、その飼い主は直ぐに周囲から”ダメ飼い主”として冷ややかな視線を浴びますので、非常にシビアな一面もあります。

あるレストランで用意されていた犬用の水。左から白ワイン、赤ワイン、白ワイン甘口、蒸留酒との表示。ユーモア満点! 


犬とのドイツ生活がまだ浅い私には、些細な文化のギャップに驚いたり、常に躾に気を遣う日々が続いています。そんな人間を横目に、我が家の犬はドイツという犬王国でパスポートを携帯し旅に出たりと、「犬権」を余すことなくエンジョイしているようです。


世界遺産の市庁舎@ブレーメンにて。どこへでも弊害なく一緒に外出できるのは、人間にとってもストレスフリーです。